売れるかどうか分からない指輪を、先に20個作って箱で抱える。ジュエリーのブランド運営は長いあいだ、この不安とセットでした。ジュエリー3Dプリントは、この順番をひっくり返します。作ってから売るのではなく、売れてから作る。この記事では、リング1型で立ち上がる架空の小さなブランドを1つ置いて、最初の30日間を時系列で追いかけます。ブランドは架空ですが、登場する日数とお金の決まりは、当社の実際の仕組みのとおりです。
手元にあるのは、CADで作ったSTLデータが1つだけ。ここまでに出ていったお金は、まだありません。
このデータを当社のご発注ページに添付して素材を選ぶと、地金代・出力工賃・キャスト工賃の内訳つきで、概算がその場に出ます。夜中でも出ます。売価はこの時点で決められます。原価の見当がつく前に値段を付ける必要がありません。
撮影用のサンプルを、まずSV925で1個だけ発注します。写真に写る質感と金額のバランスが良いので、サンプルはSV925で作る方が多いです。支払うのは前払い金¥3,500だけで、全額が最終金額に充てられます。
ここが従来との分かれ道です。ゴム型で始めていたら、この日に型の製作費と数個分の材料費が出ていきます。売れなかったときの損の大きさは、実はこの日に決まります。受注生産なら、損の上限はサンプル1個分です。
通常便の目安は約5〜7日間です。データ入稿の締め切りは15時で、金曜の15時を過ぎると月曜送付扱いになります。イベント前はこの逆算を忘れがちなので、カレンダーに書いておいてください。
届いたら、自分の目でも検品を。鋳巣(内部の小さな空洞)は鋳造の性質上ゼロにはならず、目立つものは当社の検品で弾いていますが、ブランドの合格基準は、ブランドが決めるものだと思います。
サンプルはSV925でも、販売ページにはK10もK18も並べられます。同じデータのまま、素材だけ変えて作れるためです。1回のご発注の中でも、データごとに素材を指定できます。
ページに書く納期は「お届けまで2〜3週間」あたりが無理のない線です。製作の約5〜7日間に、手元での検品と再発送の日数を足しても、余裕が残ります。
K18で1件入りました。ここで初めて、2個目のお金が動きます。
ひとつだけ気をつけることがあります。金とプラチナの地金代は、相場で毎営業日動きます。売価を何か月も固定したままだと、相場が上がった分だけ利益が細ります。ときどき概算を取り直してください。当社の概算画面の単価は週に一度の見直しで、正式なお見積りは担当が当日の単価でお出しします(有効期限24時間・再見積りは無料です)。
売れた1個分だけ、K18を指定して発注します。前払い金は同じく¥3,500。15時までに入稿したので、その日のうちに製作の準備に入ります。
検品して、お客様の手元へ。振り返ると、在庫は最初から最後までゼロのままでした。倉庫も、売れ残りの箱もありません。残ったのは、データと売れた実績です。
当社は製造完了後、お預かりしたデータを保管しません。データはブランドの資産として、お手元に残ります。ファイル名に品番と号数と版を入れておくと(RING-01_11号_v2.stl のように)、再販のたびに同じ品質で作れます。号数違いは、販売する号数のぶんだけデータを持ちます。
同じデザインが毎月数十個、安定して出るようになったら、ゴム型鋳造へ切り替える相談をする段階です。当社はどちらの作り方も自社で行っているので、数が読めるまでは型代ゼロ、読めてからゴム型という踏み方ができます。卸のお取引も承っています。
お金が出ていくのは注文のあとだけ。損の上限はサンプル1個。データは自分の資産。この3つが、在庫を持たないブランド運営の背骨です。作り方そのものの仕組みや費用の内訳はジュエリー3Dプリント完全ガイドに、金額の決まり方の詳しい話はこちらの記事にまとめてあります。
まだスケッチしかない方は、データづくりから始められます(3Dジュエリーデザイン・前払い金¥5,500・作ったデータはお渡しします。詳しくは費用の記事へ)。立ち上げ自体のご相談は初回無料で、ご来店でもオンラインでも承ります。