ブログ

ゴム型を作るか、作らないか

ジュエリー鋳造の2つの方法を6つの点で比べる / MESREH編集部 / 2026.10.01 公開

ジュエリーの鋳造には、大きく2つのやり方があります。原型からゴム型を取ってワックスを複製する方法と、3Dプリンターで出した原型をそのまま鋳造する方法です。1個から少量なら型を作らない方が安く早く、同じ形を長く大量に作り続けるならゴム型が有利です。当社はどちらの鋳造もお受けしているので、片方だけを持ち上げずに6つの点で比べてみます。

比べる2つの方法

ゴム型を使う方法では、まず金属やワックスで原型を作り、それをシリコーンゴムに埋めて型を取ります。この型にワックスを注入すると、同じ形のワックスが何本でも取れます。取れたワックスをロストワックス鋳造で金属に置き換えるのが、長く宝飾業界の標準だった流れです。

型を作らない方法では、CADデータから鋳造用の原型を3Dプリンターで直接出力し、そのまま鋳造します。1本ごとにデータから原型を作り直すので、型を取る工程がありません。工程の全体像はジュエリー3Dプリント完全ガイドで写真つきでご説明しています。

1. 型代と、1個あたりの金額

ゴム型は型そのものに費用がかかります。1個だけ作る場合、この型代がまるごと1個の金額に乗るので割高になります。10個作れば型代は10で割られ、100個なら100で割られていきます。

型を作らない方法では型代がありません。そのかわり、1本ごとに原型を出力する費用がかかります。数が増えても1個あたりの金額はあまり下がりません。

判定:少量なら型を作らない方法、数が増えるほどゴム型が追いついてきます。どこで逆転するかは形の大きさや素材で変わるため、一律の数字はお出ししていません。数量が決まっている場合は、両方の見積りを並べてお伝えできます。

2. 作れる形

ゴム型には「抜く」という制約があります。固まったワックスを型から引き出すため、内側に入り込んだ形(アンダーカット)や、中が空洞になった形は苦手です。型に切れ目を入れて工夫しますが、複雑になるほどワックスが割れたり、型の切れ目の跡が残ったりします。

3Dプリントした原型は型から抜く必要がないので、透かしの重なりや中空の構造もデータどおりに出力できます。重さを抑えるために内側を空洞にする、といった設計もできます。

ここは型を作らない方法に分があります。ゴム型で「この形は無理」と言われたデザインが作れるのは、この違いのためです。

3. 量産

同じ形を一度に何百本も流すなら、ゴム型の効率は高いままです。ワックスの注入は短時間で済み、型が1つあれば同じものが次々に取れます。

型を作らない方法でも量産はできます。ただし本数ぶん原型を出力するので、大きな数を短期間でそろえる場面では時間と費用がかさみます。かわりに、売れた分だけ追加で作る、色違いや号数違いを少しずつ作るといった小刻みな生産は得意です。

判定:大きな数を一気に作るならゴム型、小刻みに作り足すなら型を作らない方法です。

4. 表面の仕上がり

ゴム型で取ったワックスは表面がなめらかです。3Dプリントの原型には、細かく積み重ねた層の跡が出ることがあります。当社の鋳造用プリンターは層がごく薄いため、多くは鋳造後の研磨で見えなくなりますが、広い平面や鏡面仕上げでは手間が増える場合があります。どこまで消えるかは印刷の跡は、どこまで消えるのかで実例とともに書いています。

一方でゴム型は、使うたびに少しずつ縮み、傷みます。古い型から取ったワックスは寸法がずれたり、型の傷が写ったりします。

取りたての表面なら、ゴム型がやや有利です。ただし、型が古くなるとこの差は逆転します。

5. 型の保管と、作り直し

ゴム型は製品の数だけ増え、保管場所が要ります。ゴムは時間とともに硬くなり、何年も前の型を出してきたら使えなかった、ということも起こります。型をなくせば、原型から取り直しです。

型を作らない方法では、保管するのはデータだけです。データが手元にあれば、数年後でも同じ形をそのまま作り直せます。製品が増えても棚は増えません。

保管については、型を作らない方法がはっきり有利です。長く売る定番品ほど、この差が効いてきます。

6. デザインの修正

ゴム型で作っている製品の形を変えるには、原型を直し、型を取り直す必要があります。サイズ展開を増やすときも、号数ごとに型が要ります。

データで作る場合は、修正はデータの手直しで済みます。1個試して、厚みを0.2mm足してもう1個、という進め方が型代なしでできます。試作の回し方は1個だけ作って、売れたら増やすにまとめました。

修正のしやすさも、型を作らない方法が上回ります。

6つの判定のまとめ

比べた点 ゴム型 型を作らない
少量の金額 型代が乗って割高 ◎ 型代なし
作れる形 アンダーカット・中空が苦手 ◎ データどおり
大量生産 ◎ 速く安い 本数ぶん出力が必要
表面 ◎ なめらか(新しい型) 層の跡を研磨で整える
保管 型の保管・劣化がある ◎ データだけ
修正 型の取り直しが要る ◎ データの手直しで済む

両方を使い分けるという答え

どちらか一方に決める必要はありません。新作は型を作らずに1個ずつ試し、形が固まって数が読めるようになった定番品だけゴム型に移す。この順番なら、売れるかどうか分からない段階で型代を払わずに済みます。

3Dプリントした原型や、仕上がった金属の1個目を原型にしてゴム型を取ることもできます。お手持ちのゴム型やワックス原型からの鋳造はキャストのご依頼から、3Dデータからの鋳造はデータを送って発注からお申し込みいただけます。

迷ったときの3つの問い

最後に、どちらで頼むかを決めるための問いを置いておきます。同じ形を今後1年で何個作る見込みか。その形にアンダーカットや空洞があるか。数年後にも同じものを作り直したいか。1つ目の答えが大きな数ならゴム型、2つ目と3つ目のどちらかが「はい」なら型を作らない方法が向いています。決めきれない場合は、データや写真を添えてご相談ください。初回の相談は無料です。

相談する(初回無料)データを送ってご発注